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【要注意】ジョブ・ディスクリプションの意義と現地従業員への対応

いさお
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英語と日本語の通訳翻訳者。TOEIC960点、英検1級。2016年から日本とサウジアラビアを行き来し企業の経営会議、技術指導等で18ヶ国300人以上を通訳、及び関連文書を翻訳。サウジ駐在・出張は、「行けば、何とかなる」「英語ができれば、何とかなる」で挑む人は、文化上・英語上のトラブルやストレスに見舞われて、任務の遂行に支障が出やすいと痛感。そこでこれを回避すべく、サウジアラビアに駐在・出張する人が是非知っておきたい情報を、本サイトでお届け!
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「それは私の仕事ではありません」!?

例えばあなたが日本の職場で、部下に業務上の指示をしたとしましょう。
そして部下から返ってきた言葉が「それは私のやる仕事ではありません」だったらどうでしょう?

さすがにちょっとビックリしますよね!?

更に、正直、ちょっとカチンと来ますよね。
「自分の業務範囲をなぜ勝手に決めるのだ!?」って。

”自分の担当業務ではないから拒否”とは、日本ではなかなか聞かない切り返しです。
しかしひとたびサウジ アラビアへ駐在・出張すると、あなたにとって他人事ではなくなり、この種の話を直接・間接問わず耳にすることが出てくるでしょう。

 

日本ではなかなか考えられない発言が、サウジでは一体どうして出てくるのか、またこの状況に対しどのように臨めばよいか、一緒に見ていきましょう。

 

やるべき仕事の細分化と明文化

業務遂行の指示に対して、自らの職務の範囲外と訴えての拒否。
こうしたことがサウジアラビアで起きる理由は、担当業務の細分化と明文化です。

 

と言いますのも、サウジアラビアでは雇用契約を結ぶ際に、会社は文書で「このポジションの具体的な職務は、これとこれとこれですよ」と提示して、求職者もこれを承諾して入社するのです。

この文書をジョブ・ディスクリプション(job description;職務記述書)と言います。

 

もっともジョブ・ディスクリプションとは、サウジアラビアに固有というものではありません。
欧米で一般的に用いられていて、恐らく世界標準と言って差し支えないと思います。
(日本では、新卒は総合職で採用し、その後に配属や職務内容が決まるパターンが多いので、一般的でありませんね)。

サウジアラビアは、石油発見をきっかけとして1940年代以降になって社会や経済が欧米スタイルで整備されていった国です。
恐らく人事労務の制度にしてもその流れで、欧米式のやり方が取り入れられていったのでしょう。

 

ジョブ・ディスクリプションの意義として、会社も従業員も、各人のやることが根拠を持って明確になります。

日本の雇用契約書であれば、業務内容についても末尾に「その他指示のあった、事業活動に関する職務全般を行う」とか、「契約書に定めていない内容については、その都度協議を行う」とかの一文が入ったりもします。
しかし、職務範囲が際限なく広がりそうな、この種の文言は、普通ジョブ・ディスクリプションでは入りません。

ですからサウジアラビアの従業員たちは、”ジョブ・ディスクリプションに記載のない職務は、会社は従業員に強要できない筈”とみなしている節があります(ジョブ・ディスクリプションの厳密な法的効果については、ワタシも把握していません)。

 

 

ジョブ・ディスクリプションにない業務を指示すると?

ポジション毎に遂行すべき業務が文書で規定されている中で、会社や事業の状況に応じてついつい、あれもこれもと仕事の指示・依頼をサウジアラビアで出すと、どうなるでしょうか?

冒頭に書いた通り、「それは私のジョブ・ディスクリプションには書いていない」と文句を言ってくる人が出てきます。

 

これは、サウジ人従業員の場合に顕著です。
ひどい場合ですと「ジョブ・ディスクリプションに書いていない業務をやらされるから」と、呆気なく辞めてしまうこともあるくらいです。

サウジ人従業員はもともと、簡単に退職しがちです。

サウジアラビア人が理想とする勤め先は公共部門か、現職よりも待遇(≒給料)が勝る民間企業です。
あなたの駐在先・出張先が民間企業の場合、会社のサウジ人も転職のチャンスを窺いつつ働いている、と見るのが妥当です。
ですから尚更、今の仕事で不満や幻滅が溜まると、簡単に辞めてしまいがちなのです。

 

一方、これが外国人従業員の場合は、話が変わってきます。

この人たちは、ひとえに「1円でも多くお金を稼いで祖国の家族に送金する!」という目的のために、サウジアラビアにいます。
つまり、簡単に仕事を失うわけにはいかない、という事情があります。
ですから、サウジ人に比べると職場での不満への耐性はあり、ジョブ・ディスクリプションに記載のない業務の遂行指示に対しても、サウジ人のように簡単には辞めません(不満によるストレス具合や働き甲斐、といった観点からの是非は別にして)。

 

 

ジョブ・ディスクリプション有りきなサウジでの対応法

それでは、ポジションによってやるべき業務がジョブ・ディスクリプションで決められているサウジアラビアで、あなたが従業員に指示や依頼を出す立場として働く場合、どのような対応をすればよいでしょうか。

 

1. ジョブ・ディスクリプションの把握

そもそも会社のジョブ・ディスクリプションが、ポジション毎にどのような業務を行うべきと規定しているのかを把握すると良いでしょう。

ちょっとした規模の組織ですと、ひと通り目を通すだけでも骨が折れる作業です(しかも英語!)。

しかし、取り敢えずはあなたと業務で直接密接に関わってくるポジションの分だけでも、ざっと把握しておくことをオススメします。

 

2.ジョブ・ディスクリプションにない業務の遂行は、代わりに既存業務を減らす

もしジョブ・ディスクリプションに記載のない事項をやってもらう必要があるときは、その分、従来からジョブ・ディスクリプションに基づいて遂行してもらっている業務の一部を、その人の業務から外すことも一案です。

外す業務が、別の誰かのジョブ・ディスクリプションに含まれているならば、状況によっては実現可能性の高い方策になるかもしれません。

 

3.ジョブ・ディスクリプションにない業務を強いる際のシミュレーション

ジョブ・ディスクリプションに記載のない事項をやってもらう必要があって、尚且つ様々な事情で、代わりにその人の既存業務を減らすことが難しい場合、「もしジョブ・ディスクリプションにない業務を強いたら?」というシミュレーションをしてみてください。

その従業員は、”不満分子””扇動者”となって従業員間に広く影響を及ぼしそうでしょうか?

その従業員は、容易に退職しそうでしょうか?
辞めた場合、後任の見付かりやすさ、後任による仕事の穴埋めの容易さはどうでしょうか?その従業員の知見・技能を失うことで、会社はどれ程ダメージを受けるでしょうか?

等々を、総合的にシミュレーションして勘案してみましょう。

 

 

まとめ

1.
サウジアラビアの会社では、ポジション毎にジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で、業務が規定されている。

2.
ジョブ・ディスクリプションに記載の無い業務の遂行を指示・依頼すると、サウジ人従業員の場合は退職もあり得る。

3.

サウジアラビア駐在・出張時は、職務で直接関わる現地スタッフのポジションのジョブ・ディスクリプション記載内容を踏まえておくと、記載の無い業務の発生時に対応方法を考えやすくなる。

 

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